【アロマとわたし Vol.1】アロマオイルはお守りのように携帯しています。
高齢者の心理を専門分野とし、スクールカウンセラーや企業のカウンセリングなどを幅広く行っている宮本典子さん。
ご自身のアロマの使い方や、臨床心理士の立場から香りの持つ力や意味についてお話を伺いました。
暮らしのなかでアロマはなくてはならないもの
カウンセリングの仕事は、さまざまな方々とお会いしてお話を伺います。カウンセリングの中でエッセンシャルオイルを使うことはありませんが、自分自身の気持ちを整えたいときに香りの力を借りています。
仕事の合間の気分転換や心の浄化、次のカウンセリングへ気持ちをスムーズに切り替えたいときに香ったり、場の空気を変えたいときに使っています。
わたしにとってアロマオイルは、お守りのような存在です。普段から携帯しているのが、心を鎮めてくれるフランキンセンスのエッセンシャルオイルです。フランキンセンスは、イエス・キリストが誕生したときに贈られた聖書にも登場する古い歴史を持つ香り。
これまでさまざまなアロマを使ってみましたが、わたしの求めている効能や働きすべてがフランキンセンスに集約されていると感じています。咳が気になるときは、レスキューオイルとしてマスクにつけて着用すると呼吸がラクになります。
最近、もうひとつポーチに入れているのが、使いやすいロールオンタイプのアロマパルス「メディテーション」です。
昨年、瞑想コーチの資格取得したお祝いに、友人がプレゼントしてくれました。好きなフランキンセンスとサンダルウッドをベースに、ほんのりとした柑橘系で締めくくられるやすらぎの香りは瞑想後や就寝前につけたくなります。さっと手首にひと塗り。「メディテーション」の香りが深い呼吸を誘います。べたつきもないので、ネイルオイルとしても使用しています。
香りは気分を上げたり、落ち着かせたりメンタル的にも意味がありますが、一方で逃げられないもの。自分が好きな香りがほかの方も好きとは限らないので、アロマのように瞬発的に香るものだと安心して使えます。
香りは記憶を想起させる大切なツール。
高齢者の心理療法のひとつに回想法というセラピーがあります。昔の経験や思い出を語ることで不安感の軽減や自尊心の回復をめざしています。五感に働きかける事で記憶が想起しやすくなることがあります。
香りの記憶はとても鮮明です。
たとえば、お正月がテーマのときは、みかんの皮をむきながら座談会をします。あたりが柑橘のいい香りに包まれると「こたつに入って、よくみかんを食べたね」と突然、誰からともなくおしゃべりが始まります。
夏休みがテーマのときは、部屋に蚊取り線香を事前に焚いておきます。みなさん、お部屋に入ってくるなり「ああ、懐かしい夏の匂い」、「子どもの頃、蚊帳の中で寝たよね」と、それぞれの夏物語を語り出します。
普段はあまりお話しされない認知症の方も、子どもの頃から生活の中で息づいていた香りや風物詩の香りに刺激されるのでしょう。このときばかりは誰もが昔に戻り、ほんの少し饒舌になります。
毎回こうした光景を目の当たりにするたびに、失いつつある記憶を一瞬でも想起させる香りの力は、とても重要で意味のあるものだと思わずにはいられません。
お話を聞いた人:
宮本 典子さん
Noriko Miyamoto
臨床心理士・公認心理師・日本瞑想協会認定「suwaru」瞑想コーチ
臨床心理士として30年近く、医療、教育、企業などで心のケアや治療に携わる。カウンセリングをもっとカジュアルに体験してほしいという思いから、さまざまな場所で幅広い世代に心理臨床を試みている。